さあ今年もフィラリア予防!でも5月1日では早すぎる!

日本の動物病院は、「日本犬糸状虫症研究会」という団体が公表しているフィラリア感染期間の算出方法に基づいてフィラリア予防医療を行っているところが多いようなのですが…

A動物病院(埼玉)「5月初めから12月までの8か月間、毎月1回お薬を飲むことで予防します。」
B動物病院(東京)「5月上旬~11月上旬まで毎月1回の予防が必要となります。」
C動物病院(東京)「6月上旬〜12月上旬の計7回の投薬を勧めております。」
D動物病院(富山)「4月下旬~12月上旬まで毎月1回予防薬を与えることで100%予防。」

これみんな、動物病院のHPに書いてあるコトなんですよ。なぜこんなに違いがあるのでしょうか。





算出方法というのは、「HDU(Heartworm Development heat Unit)」という概念に基づくものだそうで、いくつかの製薬会社がその方法で算出したデータをウェブで公開しています。

「東京」のデータを参①の「関東エリア」ページより抜粋…したらマズイかもしれないので、自分のPCに写っているところを撮ってみました。

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これによると「東京の犬フィラリアの平均感染期間」は5月15日~11月5日となっています。赤い帯の部分ですね。平均期間じゃ不安、という人のために、15年間で最も早かった感染期間開始日(5月5日)と最も遅かった感染期間終了日(11月13日)も示してあります。

ということは「5月上旬~11月上旬」と書いてあるB動物病院が正しいのでしょうか?
いえいえ、この図の「5月15日~11月5日」とか「5月5日~11月13日」というのは「感染(の可能性のある)期間」です。


代表的なフィラリア症予防薬の「添付文書」には以下のように書かれています。(添付文書とは法律に基づいて製薬会社が作成する正式な文書です。)

投薬期間は、蚊の発生後1か月から蚊の発生終息1か月後までの間とする。(参②)
投薬期間は、犬糸状虫感染開始後1ヵ月から感染終了後1ヵ月までとしてください。(参③)

先ほどの期間と、添付文書の指示を重ね合わせて投薬日を決めるとすると、
平均感染期間で考えた場合は…
 5月15日の1か月後の6月15日ごろが初回投薬日
 11月5日の1か月後の12月5日ごろが最終投薬日

慎重を期して最も早い感染開始日と最も遅い感染終了日で考えると…
 の1か月後の6月5日ごろが初回投薬日
 の1か月後の12月13日ごろが最終投薬日

となります。

「投薬期間」
は「感染期間」より1か月後ろにずれるので、「6月上旬〜12月上旬」の投薬を勧めているC動物病院が最も過不足なく適切な表現だと言えます。(埼玉や富山のHDUデータでは、東京よりさらに投薬開始日が遅れるはずです。)

画面ショットのサイトにも書いてあるように、HDUで算出した感染期間は「あくまでも目安」で、条件によっては多少余裕をもって投薬する場合もあるでしょう。でも、1か月以上も早い4月下旬や5月上旬に投薬を開始しても、蚊にはまだフィラリア感染力がなく、まったく無駄になります。

よく「フィラリア予防薬は副作用が少ない」と言われますが、それは投与時点で気分が悪くなったり吐いたりということが少ないというだけで、肝臓に無駄な解毒をさせることはしたくありませんよね。特にシニアの場合には…。

さらに、11月上旬で投与をやめることは明らかに添付文書の指示に反することですから、十分に予防の効果が得られないことも考えられます。(上の画面ショットにも、12月に最終投薬時期の目安(骨型マーク)がついています。)



譲渡に際して、ちばわんとの約束では「5月~12月までフィラリア予防」となっていたと思います。最初のころは私も知識がなく上のような詳しいことがお伝えできていませんでした。十分余裕を見たとしても5月下旬、あるいはかかりつけ病院で「6月からで大丈夫ですよ」と言われたとしたら、どうぞその指示に従って投薬してくださいね。

また、フィラリア陽性で通年投与をしていた場合は、覚えやすい「〇月1日」で投与していたコもいると思います。治療目的の毎月投与の間は1か月間隔であればよかったので「5月1日」でも問題なかったのですが、陰性になったら「5月下旬か6月初め」をその年の初回投与にしていただけるとよいかと思います。




【おまけ】
HDUを毎年更新している製薬会社があるので、最新データはそれを見ればいいや、と思っていたら、なぜか今年から更新されず…(参④)。しかし、考えてみたら最新と言っても昨年のデータだし、ちゃんとした動物病院では自前でその年のHDUを計算しているらしい。Excelを使えば個人でも簡単にできるそうです。

HDU(Heartworm Development heat Unit) の算出方法
「1日HDU」=1日の平均気温-14(臨界温度)
※平均気温=(最高気温+最低気温)÷2
※感染開始=1日HDUを加算して130を越えた日
※感染終了=直近30日の合計HDUが130を切った時点
 (一日HDUがマイナスの時は0として計算する)

右端の「積算HDU」が130になったら「感染期間開始」です。そこから約1か月後に投薬開始すればいいわけですが、1週間ほど余裕を見て3週間後を初回投薬日としようと思っています。

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気象庁のHPから最高気温と最低気温を入れていくだけ!他の列は関数で自動計算です。
1~2週間分ぐらいまとめて入れても大丈夫。
これで今年の、しかも「東京」じゃなくて「八王子」の感染開始時期がわかる!
(製薬会社のデータは「県庁所在地」ベースなのです。)

なんだ、こんな簡単なことだったのか…。例年より暑いか涼しいかなんて、やきもきする必要はなくなったー。
もしご興味のあるいぬ親さん、預かりさんがいらっしゃったらこのシート差し上げますので、ご自分の地域のデータで上書きしてくださいね。


【追記】
2017年の八王子における感染期間開始日は5月22日でした!(ちなみに「東京」は5月13日)

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【参考サイト】
①DSファーマアニマルヘルス株式会社 疾病解説シリーズ 犬フィラリア症 5 HDU概念に基づいて算出した全国犬のフィラリア感染期間の目安
②ゾエティス・ジャパン株式会社 モキシデック錠添付文書(2013.9版)
③あすかアニマルヘルス株式会社 ハートメクチン錠添付文書(2014.1版)
④共立製薬獣医師用サイト KS TOPICS No.184 HDUを用いた近年の犬糸状虫感染期間


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by shibainukazoku | 2017-04-15 22:49 | From柴犬家族Toいぬ親さん

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